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エッチングウォレットを作る(エッチングによる秘密鍵のステンレス板への刻印)

Posted: 2017-05-21

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秘密鍵の保管は暗号通貨を所有すると必ず問題になる悩みです。

取引所に預けている人は問題外として、自分のスマートフォンやパソコンのウォレットに入れていても故障が怖い。 そこで必ず秘密鍵やパスフレーズは紙にバックアップをとってあると思います。 しかしペーパーウォレットにも欠点があり、 秘密鍵の管理方法 (5/6) – ペーパーウォレット(コールドウォレット)のリスク | ビットコインの最新情報 BTCN |ビットコインニュース ここにも書かれていますが家が火事になったら終わります。また水に濡れても破れたりしても消滅してしまいます。

そこで、そもそも紙は心もとないということで、こういうものが販売されています。 CryptoSteel はマストバイアイテム | ビットコイン研究所

ちょっと詳しい人は知っているクリプトスチールですね。これは素晴らしい製品で、火事になっても風雨に晒されても大丈夫な、ステンレス(SUS304)製のケースに文字が保存できるというすぐれものです。

でもこれ 59 ドルするし+輸送費もかかる。まあそれは良いんですが、気になる点として、クリプトスチールはパスフレーズを保管できますが、パスフレーズよりも 64 桁の 16 進数で秘密鍵を直接保管したいなというわがままがあります。BIP32 という決まりに従っているビットコインの秘密鍵なら良いんですが有象無象のアルトコインはなるべく秘密鍵そのまま保管したいなと。

どうしてかというと、もしパスフレーズの変換方法がウォレットによって違ったりするとそのウォレットがGOXした際に秘密鍵を復元するのが難しい、という心配があるためです。例えば Jaxx などのウォレットではウォレットの復元にパスフレーズが使えますが、それだけ保管しても全く安心できません。Jaxx というアプリが消滅したら使えなくなりそうだからです。 一方で BIP32 に従って秘密鍵をパスフレーズに変換したり、その逆をやるのも(できるんでしょうが)自分では難しい。

そこでステンレスの板に64文字の秘密鍵を直接印字することにしました。 方法はエッチングです。

完成図

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fig.1
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fig.2
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fig.3

抜身で保管すると中身が丸見えなのでパスケースとかに入れましょう。

準備(Materials)

ステンレス板を用意します。 今回は、ほぼクレジットカードのサイズで 86mmx54mm 厚さ 2mm のステンレス板、表面のみ鏡面(#400)仕上げを使用。 4つ角は 1R の仕上げでやっていますがそこら辺は好みの問題です。 未研磨の2B板(普通の白っぽい表面のステンレス板)でも可。 ある程度金属光沢がある表面なら大丈夫だと思います。 金属光沢がないと可読性が低くなります。

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fig,4
保護シール付き。
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fig.5

オキツモの耐熱マーカーをマスク用に使用します。 https://www.amazon.co.jp/dp/B06VXXMJ7H/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_grAgzbJ9RGPMC

腐食液。アマゾンで買います。なんでこんなに安いんですかね? しかし問題なく使用できます。 https://www.amazon.co.jp/dp/B0020VFJ8K/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_xsAgzbYACT905

腐食液中和用の消石灰。これを使わず腐食液を下水に流したりすると下水管が溶けて最悪なことになるので必ず使用しましょう。 https://www.amazon.co.jp/dp/B0020VDF7C/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_AtAgzbP1V1H22

金属板が入る大きさのタッパーx2

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fig.6
スーパーに売ってる普通のタッパー。カードがちょうど入る大きさが良いです。

安全具。防護メガネと手袋です。酸性の液体なので必ず使用しましょう。最悪でもメガネは掛けましょう。 手袋も必須。スーパーでも売ってます。

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fig.7

その他

リトマス試験紙

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fig.8

タイマー

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fig.9

レシピ(Method)

ステンレス板にマーカーで秘密鍵を書く。 写真は例なので 16 進数を順番に 64 桁書いている。

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fig.10

乾いたら、上からもう一度書く。これは薄い部分が綺麗に印字されないため。

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fig.11

文字が乾くのを待つ間に反応停止槽を作っておく。

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fig.12
もうひとつのタッパーに水と消石灰を入れて軽く混ぜておきます。

ご覧の通り強アルカリになっているのでリトマス試験紙が青く染まります。

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fig.13

乾いたらタッパーにプレートを入れます。 下にキッチンペーパーをひいてあるのは、裏側に気泡が貯まると裏側が汚くなるため。裏側は印字されないので気にしなくてもいいです。

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fig.14

手袋と防護メガネをかけて、腐食液を入れます。 どぶ漬けなので表面を完全に覆うくらい入れましょう。

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fig.15

反応時間は 20 分〜30 分です。気温によって前後する可能性あり。 長くやり過ぎるとマーカーが剥げて文字が消えます。

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fig.16

蓋をして待つこと 20 分。

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fig.17

時間になったので取り出して反応停止槽に突っ込んだの図

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fig.18
一人でやってるのであいだの写真撮ってる暇がない。 黒くなっているのは酸化鉄かな。

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fig.19
ちゃんと反応が止まっていることを確かめるためにリトマス試験紙でPHを測定。 アルカリが過剰で、酸は全て中和されてます。

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fig.20
取り出したプレート。キッチンペーパーで拭いて大量の水で洗う。
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fig.21
さらにパーツクリーナーかシンナーでマーカーを落とします。

完成!

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fig22
大きさはカードサイズです。
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fig.23

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fig.24

写真だと文字のところだけ色が変わっているようにしか見えませんが、 指で触ると文字部分が僅かに出っ張っていることがわかります。

しっかり印字できているのでこれで家が火事になってもプレートを沼に沈めて十年たっても印字が消えることは無いでしょう。

注意

今回の記事は危険な薬品を使っていますので参考にする場合は全て自己責任でお願いします! また、使用した薬品の廃棄処理もお住まいの国、市町村区の指示に従ってください! 怪我をしたり奥さんに怒られても黄金虫ブログはこれっぽっちもなんの責任を負いません!

廃液処理

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fig.25
結構大量に入れないと中和されないですね。

それでは!